Ⅰ 動産譲渡登記
1 動産譲渡登記制度とは
動産譲渡登記制度は、動産を活用した企業の資金調達の円滑化を図るため、法人が行う動産の譲渡について、民法の特例として、民法の定める対抗要件具備方法(現実の引渡し等、民法182条~184条)によるほか、公示性に優れた登記によって対抗要件を備えることを可能とする制度として、平成17年10月3日から創設されました。
2 動産譲渡登記の目的
動産を活用した資金調達の具体的な方法としては、これまでは、企業が動産を譲渡担保に供して金融機関等から融資を受ける方法と、動産を流動化・証券化目的で譲渡し、譲渡代金として資金を取得する方法とがありましたが、いずれの方法においても、動産自体は、譲渡後も企業の直接占有下に置かれたままなであるのが通常です。このような場合、これまでは占有改定(民法183条)という外形的には判然としない公示方法によって対抗要件を具備するしかありませんでした。
動産を活用した企業の資金調達の円滑化を図るため、法人が行う動産の譲渡について、公示性に優れた登記によって対抗要件を備えることを可能とする制度が創設されました。
3 動産譲渡登記の概要
(1)登記の対象
①法人がする動産の譲渡
動産譲渡登記の対象は、「法人がする」動産の譲渡に限定されています。
②譲渡の目的となる「動産」
譲渡の目的物となる「動産」について、特例法は、単に「動産」とのみ規定するだけで、原則として何ら制限もありません。
③動産譲渡登記の対象となる譲渡の目的
動産譲渡登記の対象となる譲渡の目的は、何らの限定もされていません(特例法3条参照)。
(2)登記の効力
動産譲渡の登記がされたときは、当該動産について、民法第178条の引渡しがあったものとみなされ(特例法第3条)、動産譲渡につき対抗要件が具備されます
動産譲渡登記は、動産の譲渡の事実を公示するものであって、この登記により動産の存在やその所有権の帰属を証明するものではありません。
動産譲渡登記について不明な点があれば、ご相談ください。
Ⅱ ABL(アセット・ベースト・レンディング)
1 ABLとは
企業の事業価値を構成する在庫(原材料、商品)や機械設備、売掛金等の資産を担保とする融資です。ただし、ABLは、単純に事業収益資産を担保として融資するだけでなく、債権者が事業の継続・発展を支援する融資でもあります。事業に必要な資産を担保として提供しますが、通常の企業活動の範囲では原材料や機械等を生産活動に利用でき、また、担保に提供した商品も取引先に販売することができます。
担保として提供する資産は具体的には、動産である商品・在庫・原材料、売掛債権等である。動産については、譲渡担保した対抗要件として動産譲渡登記を設定し、債権については債権譲渡登記を設定する。動産については、担保提供する商品等が債務者の手元に残るため、第三者対抗要件の公示手段として登記が利用されるのです。
2 ABL(アセット・ベースト・レンディング)のメリット・デメリット
(1)メリット
①資金調達手段の拡大
担保として活用されていなかった売掛債権や在庫動産等の事業収益資産を担保することで、いままで不動産担保や個人保証でしか資金調達ができなかった企業の資金調達を多様にさせます。
②事業拡大に伴う安定的な運転資金の確保
ABLは売掛債権や在庫動産等の事業収益資産を活用することにより事業そのものの収益性に着目した融資であるので。事業収益資産に応じた融資を受けられることができ、安定的な運転資金を確保できることとなります。
③金融機関との関係強化
金融機関が融資先企業のモニタリングを行うことにより、企業は自社の事業を金融機関に理解してもらうことが可能となります。
(2)デメリット
一度事業収益資産を担保提供すると、他の金融機関に対してその事業収益資産を担保提供することができません。
つまり、事業収益資産は原則として譲渡担保により金融機関へ所有権が移転します。そのため、借り手企業は事業収益資産の所有権を有していないため、事業収益資産を他の金融機関へ担保提供できないこととなります。
3 ABL手続きの流れ(借り手サイドから)
ABLを利用する際の手続の流れは一般的には次の通りとなります。
①ABLの利用について貸し手に相談、貸し手から説明を受ける。
②ABLによる融資を申し込み、貸し手による審査を受ける。
③担保とする資産(動産・債権)の評価を受ける。
④貸し手と借り手で融資契約が締結する。
⑤担保にする資産に関する登記(債権譲渡登記・動産譲渡登記)を行う。
⑥融資の実行
ABLに関する登記(債権譲渡登記・動産譲渡登記)ついてのご相談も承ります。